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組織ガバナンス

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組織全体をその目標に向かって健全に機能させるための仕組みとは...?


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当該ポッドキャスト(音声概要)は、Google NotebookLMにて生成されたものです。
日本語の読み・発音等に不正確な箇所がありますが、このページの大筋を把握するのに役立ちます。

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戦略的視点 #9

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組織ガバナンスの機能

組織に働くモーメンタム
倫理観の高い個人を集めたとしても、ひとたび組織というかたちを成すと、そこには個人の意思を超えるモーメンタム(力学)が働くようになります。

たとえば、組織全員の同調に水を差したくなくて、疑問を感じても口を閉ざしてしまう。この組織がやろうとしている社会貢献の意義を規制当局や世間は全く理解していないと考えて、内輪の論理を優先する。
このようなモーメンタムは、集団の調和や結束を維持しようとするあまり、客観的で批判的な思考ができなくなり不合理・危険な意思決定を下してしまう「集団思考」(Groupthink)と呼ばれます。

集団思考に陥ると、その組織の全員が確信を持って「間違った結論」(たとえば不正な行為)を選んでしまうことになり得ます。

そのような集団思考に陥らないための仕組みが「組織ガバナンス」(Organizational Governance)です。

組織ガバナンスの定義
国際標準化機構(ISO)が2010年に発行した社会的責任の国際規格「ISO26000」(Guidance on Social Responsibility)によれば、組織ガバナンスとは『組織がその目的を追求するために、意思決定を行い、それを実行する仕組み』と定義されています。

  • ISO26000による「組織ガバナンス」の定義
    The international standard on social responsibility, ISO 26000, defines organizational governance as "a system by which an organization makes and implements decisions in pursuit of its objectives." Governance systems include the management processes designed to deliver on performance objectives while considering stakeholder interests.
    [出典] What Is Organizational or Corporate Governance?

端的には、組織ガバナンスとは「組織全体がその目標に向かって健全に機能するための仕組み」であり、より具体的には、社内の意思決定プロセスやリスク管理、職務権限・責任の所在等を明確にすることです。

なお、類似の概念・用語に「コーポレート・ガバナンス」「コンプライアンス」「企業倫理」があります。これらは「組織ガバナンス」と個別独立に機能するものではなく、密接に関連しています。

  • コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance)
    経営の健全性や透明性を企業の外部(株主や投資家などステークホルダー)が監視する仕組み。日本では、金融庁と東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を策定しており、上場企業が守るべきガイドラインとして機能している
  • コンプライアンス(Compliance)
    法令、就業規則、ハラスメント防止などの社会規範や社内規則を守ること
  • 企業倫理(Corporate Ethics)
    企業が社会的責任を果たすうえで守るべき、コンプライアンスを超えた道徳的・社会的に正しい判断基準や行動指針

ガバナンスイメージ

不正のトライアングル
組織で行われる不正には、贈収賄・横領・架空請求・粉飾決算・検査偽装・物品盗難・データ改ざん・機密情報持ち出し・ハラスメントなどがあります。

不正は、社員等個人の良心や倫理観に任せるだけでは防ぎきれません。
組織ガバナンスが機能していない組織では、「仲間を守るため」「組織を存続させるため」などという歪んだ正義感が働き、罪悪感を抱くことなくむしろ「使命感」を持って不正に手を染めてしまうことが起こり得ます。

犯罪心理学者のドナルド・クレッシー(Donald Ray Cressey)が提唱した「不正のトライアングル」(The fraud triangle)理論によれば、不正は以下の3つの要素がすべて揃ったときに行われやすくなるとされています。
さらに、全米州監査官・会計官・財務官協会(NASACT)によれば、80%の人は「不正のトライアングル」の3要素が揃う状況に置かれると不正に走る可能性があるとされています(注1)。

  • プレッシャー・動機(Pressure/Motivation)
    不正を行う個人的な理由や必要性
    例)個人的な金銭トラブル / 倒産危機 / ノルマ達成への過度な重圧
  • 機会(Opportunity)
    不正を物理的に実行でき、かつ、発覚しにくい客観的な環境
    例)社内チェック体制の不備 / 一人の担当者への業務権限の集中
  • 正当化(Rationalization)
    自分の行為を「これは会社のためだ」「みんなやっている」などと自己納得する心理
    例)不当な扱いを受けるのを恐れて事実を隠蔽 / 少し誤魔化しても後で帳尻を合わせれば問題ないとする口実 / 自分は特別扱いされているから多少の不正も許されるとするこじつけ

不正リスク低減のための実装
組織として不正リスクを低減するには組織ガバナンス、すなわち以下4つすべての内部統制の実装が重要になります。
これは卑近な言い方すれば、「不正を働く隙がない」(透明性・実効性)かつ「不正を働く気が起きない」(公正性・一貫性)状況を作るということです。

  • 透明性(Transparency)
    「隠れて悪さはできない」という環境を作る
    →「機会」を抑制
    • 業務プロセスをブラックボックス化(密室化)させない
    • 常に「誰かに見られている」「後で必ずバレる」という心理的な抑止力が働くよう社内で情報が適切に開示され、都合の悪い情報も経営陣に直接的に届くようにする
  • 実効性(Effectiveness)
    「ルールは形だけ」という隙を作らず実際に機能させる
    →「機会」を抑制
    • 内部監査を抜き打ちで実施する
    • 現場でのショートカット(手抜き)を誘発するような複雑なルールを作らない
    • すでに投入した費用(注2)に執着せず、将来の利益に基づく合理的な(撤退や中止の)判断を優先する
  • 公正性(Fairness)
    「自分だけが損をしている」という不満を排除する
    →「動機」と「正当化」を抑制
    • 一人の担当者に業務量や責任が集中しないよう職務分掌する
    • 数値的な目標達成だけでなくプロセスの正当性も評価する
    • 意思決定の際にあえて批判的な立場から反論する「悪魔の代弁者」(Devil's Advocate)を必ず割り当てる
  • 一貫性(Consistency)
    「例外は認めない」という組織文化を醸成する
    →「正当化」を抑制
    • 人事評価や報酬、処罰などで特別扱いや恣意を認めず、経営陣を含め社内の全員に一貫した評価基準を適用する
    • 経営陣は率先垂範して社内外のルールを厳格に遵守し、組織全体の高い倫理観の維持に努める

組織ガバナンスの本当の目的
組織ガバナンスは、社員が信用ならなくて不正を犯しかねないから監視・統制するというのが本当の目的ではありません。

内部統制の不備が原因でつい魔が差したり過度な重圧で追い詰められたりして、誠実で善良であるはずの社員が一生を台無しにする過ちを犯さないよう守るというのが本当の目的です。

したがって、不正が万一発覚した場合に、不正を犯した者だけに問題があり組織には何ら問題はないと捉えるのは妥当ではありません。誠実で善良であったはずの者を不正に走らせた内部統制の重大な不備を認めることが、組織としてあるべき危機管理のあり方と考えます。

注1)「10-80-10の法則」("10-80-10 Rule" by National Association of State Auditors, Comptrollers and Treasurers (NASACT) and the Oregon State Controller’s Division)とは、組織内での不正発生の可能性を人の性質をもとに分類した考え方で、次の3つのグループに分けられるとしています。①10%:どのような状況でも決して不正を行わない人(高い倫理観を持ち、機会や誘惑があっても決して不正に手を染めない)、②80%:状況次第で不正を行う可能性がある人(通常は誠実だが、「不正のトライアングル」の3要素が揃うと魔が差して不正を行う可能性がある)、③10%:常に不正の機会をうかがっている人(最初から不正を働く意図を持っており、隙あらば行おうとする)
注2)今後どのような選択をしても回収することができない支払済みの費用(時間、金銭、労力)のことを「サンクコスト」(Sunk Cost:埋没費用)と言います。これまでに投じた費用が無駄だったと認めたくない心理や自分の過去の判断は正しかったと証明したい心理などが働き、合理的な判断ができなくなる現象を「サンクコスト効果」(コンコルド効果)と呼びます。サンクコスト効果は、組織では損失に損失(嘘に嘘)を重ねるような(不正の)泥沼化を招く大きな要因となります。

戦略的視点

組織では、個人の意思を超えたモーメンタム(集団思考)が働くようになる。それは個人の良心や倫理観を超えて、集団の調和や結束を維持しようとするあまり、客観的で批判的な思考ができなくなり「間違った結論」すなわち不正をも選んでしまうことが起きうる。

集団思考に陥らないための仕組みが組織ガバナンスである。
組織ガバナンスとは「組織全体がその目標に向かって健全に機能するための仕組み」を言う。

組織ガバナンスが機能していない組織では、「仲間を守るため」「組織を存続させるため」などという歪んだ正義感が働き、罪悪感を抱くことなくむしろ「使命感」を持って不正に手を染めてしまうことが起こりうる。
不正は、「プレッシャー・動機」「機会」「正当化」の3要素がすべて揃ったときに行われやすくなるとされている。
組織として不正リスクを低減するには、それら3つの要素を抑制することが必要であり、組織ガバナンスとして4つの内部統制、①"隠れて悪さはできない"という環境を作る「透明性」、②"ルールは形だけ"という隙を作らず実際に機能させる「実効性」、③"自分だけが損をしている"という不満を排除する「公正性」、④"例外は認めない"という組織文化を醸成する「一貫性」を実装することが重要となる。

組織ガバナンスの本当の目的は、社員を信用ならない者として監視・統制することではない。内部統制の不備が原因でつい魔が差したり過度な重圧で追い詰められたりして、誠実で善良であるはずの社員が一生を台無しにする過ちを犯さないよう守ることにある。

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業務合理化チェックリスト

組織ガバナンスの内部統制と内部監査を機能させて、誠実で善良であるはずの社員が不正に手を染めることがないようにしましょう。

1. 内部統制の実装チェックリスト

不正を働く「隙」をなくし「その気」を削ぐ仕組み

  • 【透明性】隠れて悪さができない環境か
    • 業務プロセスが特定の個人しか見えない「密室」(ブラックボックス)になっていないか?
    • 都合の悪い情報(バッドニュース)が、現場から経営陣へ直接届くルートが確保されているか?
    • 常に「誰かに見られている」「後で必ずバレる」という心理的抑止力が効いているか?
  • 【実効性】ルールが形だけになっていないか
    • 現場がショートカット(手抜き)をしたくなるような、複雑すぎるルールになっていないか?
    • 失敗を認めたくない心理(サンクコスト効果)に縛られず、中止や撤退を合理的に判断できているか?
  • 【公正性】不満や過度なプレッシャーを排除できているか
    • 特定の担当者に「業務権限」や「責任」が集中しすぎていないか?(職務分掌の徹底)
    • 数値目標の達成度だけでなく、そのプロセスの正当性も評価対象に含まれているか?
    • 意思決定の際、あえて批判的な意見を出す「悪魔の代弁者」が必ず任命されているか?
  • 【一貫性】例外を許さない文化があるか
    • 経営陣自らがルールを厳格に守り、率先垂範しているか?
    • 職位や功績、職歴に関わらず、評価・報酬・処罰が同じ基準で一貫して適用されているか?

2. 内部監査での不正検知チェックリスト

不正のトライアングルの兆候をつかむ仕組み

  • 【プレッシャー・動機】不正を行う個人的な理由や必要性の検知
    • [過度の重圧] 倒産危機や達成困難なノルマなど、社員を「不正をしてでも守らなければ」と追い詰める状況が生じていないかを確認する
    • [不公平感] 自分だけが損をしているといった不満が溜まりやすい評価構造になっていないかを確認する
  • 【機会】不正を物理的に実行でき、しかも発覚しにくい客観的な環境の検知
    • [抜き打ち監査] 予定調和ではないタイミングで実地調査を行い、現場の「油断」に不正の痕跡がないかを確認する
    • [権限の集中] 長期間にわたり同じポジションにいて、誰も内容をチェックできない業務がないかを確認する
  • 【正当化】不合理・危険な意思決定に納得する集団思考の検知
    • [同調圧力] 異論を唱えにくい暗黙の圧力や「会社のため」「みんなのため」という言葉がルール違反の免罪符になっているような空気感がないかを確認する
    • [サンクコスト効果] 損失が出ているプロジェクトを「これまでの投資がもったいない」という理由だけで継続し、結果として嘘(不正)を重ねる状況に陥っていないかを確認する

新規追加:2026年2月12日

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執筆:山田 芳之
ビズガイバー 代表

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執筆者略歴


山田 芳之

やまだ よしゆき
1972年生まれ

ビズガイバー
代表

【略歴】

  • 大阪あべの辻調理師専門学校卒、大阪大学経済学部経済・経営学科中退、京都大学法学部卒
  • [保有資格等] 調理師免許(1996年取得)
  • 高等学校卒業後、居酒屋、ベーカリー、ファミリーレストラン等の飲食業界にて、接客および調理業務を担当
  • 調理師専門学校卒業後、調理師の腕を頼りに数年間ボランティア活動
  • 2002年から大学在学時9年間、学校法人代々木ゼミナール大阪校にて、大学受験生を対象として主に英語と国語の学習指導および個別指導学生講師を担当。学習指導では通算10,800件超の入試問題解説、個別指導では担当した20余名の受験生全員が第一志望に合格
  • 2012年2月、Apple Inc.に入社。リテール部門配属でApple Store, Shinsaibashiにて、モバイル機器全種のハードウェアおよびソフトウェアの技術サポート(モバイルエンジニア)業務を担当。入社後の約3年間に顧客のべ23,200名(注:日本武道館の収容人員の2倍強)の技術サポートを対面にて実施。企業経営やビジネスモデルの模範とされるAppleの理念や組織文化、エコシステムなどそのDNAを直に学んだのが強み
  • 2015年10月、ITサービス(IT導入による経営・業務改善、知的無形資産創出等)を提供するコペルニソン合同会社を設立、代表社員に就任。創業2期目で黒字化、通算50以上の事業者の経営・業務改善、30超の事業者の知財創出支援。後継者未育成のところ過労により身体的健康を著しく害し2018年8月廃業・会社閉鎖
  • 2019年5月、スタートアップ支援のベンチャー企業である株式会社ツクリエ(東京都千代田区)に入社。試用期間中に、神戸市の起業支援施設にて起業・経営相談、および京都市からの受託事業(雇用創出事業)の統括責任者を担当
  • 2019年9月、ITマーケティングとして経営・業務改善を個人名義で請負。数社に対して中長期にわたる支援・取り組みを継続(現職)
  • 2022年10月、オンラインを皮切りに、組織の経営最適化にコミットする当事業「ビズガイバー」を創業(現職)