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米国テック業界発の1on1ミーティング。その本来的な目的と機能とは...?

戦略的視点
#5

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1on1ミーティングを本来的に機能させる視点

「1on1ミーティング」(One-on-One Meeting = ワンオンワン・ミーティング、「1:1s」とも略記される)は、働き方や人材の多様化が進み現代的なマネジメント手法が進展した1970〜1980年代に、米国のテック業界で行われていたミーティング形態がその始まりとされています。

1on1ミーティングのコンセプトが業界を超えて世界的に広く認知されたのは、インテル(Intel Corporation)のCEOを1987年から1998年に務めたアンドリュー・グローヴ(Andrew S. Grove)氏の著書「High Output Management」(1983年)によるところが大きいと言われています。

周知のように、1on1ミーティングは「マネージャーと従業員が1対1で定期的に行うミーティング」であります。

どの程度の頻度と時間で実施するかはマネージャーと従業員の関係性によるところですが、米国のテック業界を対象に行われた2020年のある調査では、「毎週30分程度」の実施形態が過半数を占めたとのことです。
なお、見かけ上の実施形態が全く同じでも、いわゆる人事評価等の個人面談とは性質を異にします。

1on1ミーティングの目的は、

  • 自社やチーム、仕事に対する従業員の「エンゲージメント」(注1)を高めて、従業員およびチームの生産性を向上させること
  • マネージャーと従業員との信頼や共感を構築すること
  • 個々の業務やチームの達成目標・進捗・最新情報を随時共有すること
  • 従業員それぞれの成長やパフォーマンスを阻害しうる要因を把握し、燃え尽き症候群や離職等を防ぐこと
  • 従業員の業務上の成長やキャリアの前進を後押しすること

ある調査によれば、1on1ミーティングは、仕事におけるエンゲージメントを3倍以上向上させるとのことです。
また、ギャラップ(GALLUP)はその調査のなかで、エンゲージメントの高いチームほど組織内でポジティブな成果を生み出す傾向が見られるとしています。さらに、低いエンゲージメントは、世界経済に対して8.9兆米ドル、つまり世界のGDPの9%に相当するコストをもたらしていると推計しています。

1on1ミーティングの目的に鑑みれば、その議題対象は、業務のみならずプライベートな内容も含まれることになります。

つまり、1on1ミーティングを担当するマネージャーに求められるのは、

  • コーチングやメンタリングの高いスキル
  • オープン・マインド(注2)
  • 傾聴力
  • 他人事・厄介な悩み事にも共感を示せる誠実さ

1on1ミーティングの導入に際しては、マネージャーの意識改革や対人スキルの向上が必要です。従業員の悩み事に適切に対処するためには、専門家によるカウンセリング制度の設置も重要になります。

日本では、1on1ミーティングは2010年代から導入され始めました(Yahoo! Japanの2012年導入が日本での先駆とされています)。
しかしながら日本の企業では、コミュニケーション下手な国民性も相俟ってか、見かけ上の実施形態だけが模倣され、「1on1ミーティング」の実態を伴っていないケースが多く見受けられます。

まず何より、1on1ミーティングは、

  • マネージャーが従業員に説教を垂れる場ではない
  • 具体的な議題も目的もなく、ただ何かおしゃべりして親睦を図るためのものではない
  • 日頃コミュニケーションが全く取られておらず、そもそも信用できるかどうか分からないマネージャー相手では、従業員は腹を割って話せるわけがなく、従業員にとって何の解決にも足しにもならない

すなわち、マネージャーの意識改革や対人スキル向上は、1on1ミーティングが機能するための「前提」と言えます。

その「前提」の有無は、「日頃からマネージャーが従業員と最低限のコミュニケーションを取っているか」によります。
日頃ろくに挨拶も交わさず、すれ違う際に一言二言かけることすらせずに「1on1ミーティング」と言われても、従業員は身構えて当たり障りのない表面的な会話で済ませるだけでしょう。何の解決にも足しにもならない不毛なミーティングを定期的に強制されようものなら、パフォーマンスや生産性がかえって低下しかねません。

どのような状態にあれば最低限のコミュニケーションが取られていると言えるかについては、たとえば「マネージャーと従業員の双方が快くランチを同席できるような親近感を持ち合わせているか」にも見ることができましょう。
1on1ミーティングをどのように実施するか以前に、従業員が話しやすい・相談しやすい環境・雰囲気を作り「心理的安全性」(注3)を高めることが先決です。

注1)「エンゲージメント」(Engagement)とは、一般的に『自社やチーム、仕事との繋がりや関わり合いの意識、あるいはそれらへの帰属意識』を意味します。いわゆる「従業員エンゲージメント」は、『従業員が自分の仕事や職場にどれだけ関わり合いを感じ、熱意を持っているか』を示す指標とされます。
注2)「オープン・マインド」(Open Mind)とは、一般的に『自分の考え方や意見が正しいとの先入観を持たずに、異なる考え方や意見を理解し素直に受け入れる柔軟で寛容な心(のあり方や態度)』のことを言います。反対語は「クローズド・マインド」(Closed Mind)です。
注3)「心理的安全性」(Psychological Safety)とは、『組織やチームで、自分の意見や気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態(ないしその度合い)』を指します。心理的安全性が高い組織やチームでは、意見等の対立があってもそれぞれの意見等が尊重され協力し合うことが期待できるため、拒絶や非難、罰を受けることを恐れることなく安心して業務に専念できるのが特徴とされます。

戦略的視点

1on1ミーティングの目的は、「従業員のエンゲージメントを高めて従業員のパフォーマンスやチームの生産性を向上させる」ことを主たる目的として、「マネージャーと従業員との信頼関係を構築する」「業務やチームの達成目標等を随時共有する」「従業員の成長やパフォーマンスの阻害要因を排除して燃え尽き症候群や離職を防ぐ」「従業員の業務上の成長やキャリアの前進を後押しする」ことにある。

そのためには、マネージャーは自らのコーチングやメンタリングのスキルを高め、オープン・マインドで傾聴し、従業員それぞれの課題や悩み事に向き合う誠実な共感力を向上させる必要がある。

すなわち、1on1ミーティングを本来的に機能させるためには、マネージャーが日頃から従業員と最低限のコミュニケーションを取るよう努め、従業員が話しやすい・相談しやすい環境・雰囲気を作り心理的安全性を高めることがまずもって重要である。

新規追加:2025年4月4日

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執筆:山田 芳之
ビズガイバー 代表

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