ビジネスの変革:DXの戦略的推進
提唱当時の定義
デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)、すなわち「DX」が初めて提唱された2004年当時の定義は以下のようなものでした。
- "Information Technology and the Good Life" by Erik Stolterman (2004年)
The digital transformation can be understood as the changes that digital technology caused or influences in all aspects of human life.
つまり、「デジタルによる社会全体の変革」(人の生活のあらゆる面で、デジタル技術がもたらした、あるいは影響を及ぼす変化全体)を意味する概念でした。
現在主流の定義
DXの定義は様々ありますが、現在主流の定義によれば、DXは単なるデジタルな技術導入や業務効率化ではなく、社会や組織の構造的な変革を意味します。
- 経済産業省「デジタルガバナンス・コード」(2020年)
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。 - "Understanding digital transformation: A review and a research agenda" by Gregory Vial(2019年)
A process that aims to improve an entity by triggering significant changes to its properties through combinations of information, computing, communication, and connectivity technologies
社会全体という広義な文脈よりビジネスという狭義な文脈で、「企業がデジタル化により主体的かつ戦略的にもたらすビジネスの変革」と捉えるのが、日本を含む世界共通の現在的な潮流です。
DXの位置付け
デジタル化の3段階は一般的に以下のように分類され、DXはその3段階のうち最終段階に位置づけられます。
- デジタイゼーション(Digitization)
アナログ情報をデジタル化 - デジタライゼーション(Digitalization)
業務プロセスをデジタル化 - デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)
デジタル化によりビジネスモデルを変革して競争優位性・成長持続性を確立
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パーパス経営との親和性
競争優位性や成長持続性を確立するには、企業は社会貢献の視点からその理念等を見直す必要があります。
企業が社会貢献の視点からその理念等を捉えるのがいわゆる「パーパス経営」(注1)であることから、DXは「パーパス経営」と親和性が高いです。実務的には、DXはそれ自体が目的ではなく、パーパスという目的を実現するための手段と捉えるのが妥当です。
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パーパスとDXのあり方については、たとえば以下の事例が参考になります。
- 富士通株式会社 〜 パーパス軸・経営主導が照らす「シン・DX」の価値創造
- 味の素株式会社 〜「ありたい姿」へ向けDXが成長経営の基盤となる
つまり、パーパス実現に向けた全社対象のトップダウンという燃料だけでなく、現場主導で改善・改革を進めるボトムアップというエンジンも必要です。
ただ、このトップダウンは、たとえば経営者1人のカリスマなリーダーシップに拠るだけではうまくいかないかもしれません。デジタルのみならず生成AIにも精通した経営トップ層(あるいはそのような現場リーダーも意思決定の場に加えての)3名以上のトップダウン体制が望ましいとの見方もあります(注2)。
将来を見据えた取り組み
企業のDXは日本経済の今後を左右する重要事であるため、経済産業省や情報処理推進機構(IPA)がDX推進あるいはデジタル化に関する施策や指針を詳細に掲げています。
ただし、それら施策や指針にただ則って助成を受けさえすれば企業は自ずとDXを推進できる、というわけではありません。
5年後や10年後、さらには数10年後を見据えて、企業それぞれが全社員総力をあげて逆算的かつ中長期的に取り組むべきものであります。
注1)「パーパス経営」とは、企業が短期的な利潤追求にとどまらず、中長期的な社会貢献(社会における自社の役割)の観点からその存在意義(自社は何のために存在するのか)を明確に定め、それを軸としてすべての企業活動を行う経営手法のことです。
注2)MITスローン経営大学院(MIT CISR: MIT Center for Information Systems Research)が米国の大企業を対象として行った研究(2019年公表)によれば、デジタルに精通した経営トップ層が3名以上いる企業は、競合他社と比べて利益率が17%高く、売上成長率が38%高いという財務パフォーマンスが確認されたとのことです。なお、その追跡調査(2024年以降公表)によれば、今日では「デジタルに精通している」ことは当たり前でそれだけでは優位とはならず、「生成AIに精通している」ことが命運を分けるとしています。
戦略的視点
DXは、デジタル化の3段階(デジタイゼーション / デジタライゼーション / デジタルトランスフォーメーション)のうち最終段階に位置付けられている。
初めて提唱された当時は「デジタルによる社会全体の変革」を意味する概念だったが、現在はとくにビジネスの文脈で「企業がデジタル化によりビジネスモデルを変革して競争優位性・成長持続性を確立すること」と定義される。
競争優位性や成長持続性を確立するには、企業は社会貢献の視点からその理念等を見直す必要がある。企業が社会貢献の視点からその理念等を捉えるのが「パーパス経営」であることから、DXは「パーパス経営」と親和性が高い。DXはそれ自体が目的ではなく、パーパスという目的を実現するための手段である。
いうなればDXには、パーパス実現に向けた全社対象のトップダウンという燃料だけでなく、現場主導で改善・改革を進めるボトムアップというエンジンも必要である。
DXは、5年後や10年後、さらには数十年後を見据えて、企業それぞれが全社員総力をあげて逆算的かつ中長期的に取り組むべきものである。