企業・組織合理的に考え行動する視点
経営者視点とは
社員も仕事では「経営者視点」を共通に持つべきだと言われています。
その「経営者視点」とは『経営者のように(企業・組織合理的に)考え行動する視点』を意味します。
ただし、その意味合いには少なくとも以下2通りの解釈の余地があります。
- 経営者一般の通用的な考え方や行動慣例に倣って、自社および組織の方向性や利益を考え行動する視点
- 自社の現経営者の考え方や行動方針に倣って、自社および組織の方向性や利益を考え行動する視点
経営者視点の困難さ
ここで留意したいのは、「経営経験のない者が経営者のように考え行動することは可能か」という点です。
例えるならばそれは、登山経験のない者に対して「その山の頂上から見たままの景色を絵を描け」と言うようなものです。
上述の2通りの解釈はいずれも、経営経験のない者が(たとえば映画やTVドラマの受け売りで)「経営者はこんな感じだろう」と考える漠然としたイメージを拠り所としているため、現実に「社員が共通に持つべき実務的な視点」とするには無理があります。
また、経営者は自社およびその損益に関するすべてを全体最適かつ逆算的に考えて行動しているわけですが、組織構造的に経営機密や全社的な情報にアクセスできない社員に対して経営者同様に考え行動することを求めるのは無理筋でしょう。
つまり、社員も「経営者視点」を共通に持つべきというのは現実的ではない「べき論」ということになります。
理念経営に基づく視点
では、社員も共通に持つべき現実的・実務的な「企業・組織合理的に考え行動する視点」とは何か。
経営陣のみならず社員のすべてが自社の理念等(注1)をその考え方や意思決定に反映させて行動するいわゆる「理念経営」(ビジョナリー経営)は、近年とくに重視されている企業・組織の経営のあり方です。
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- 理念経営(ビジョナリー経営)
企業が目先の短期的な利益より長期的な成長と社会的な存在価値を重視し、明確な理念やビジョン(MVVやパーパスなど)を軸に据えて一貫した意思決定および事業運営を行う経営手法。時代や市場の変化に揺るがない強固な組織を築く基盤として重視されている。米国の経営学者ジム・コリンズ(Jim Collins)の著書「ビジョナリー・カンパニー」によって世界的に広く知られるようになった
社員も共通に持つべき「企業・組織合理的に考え行動する視点」とは、経営者同様のその視点ではなく、理念経営に基づくその視点とするのが現実的にも実務的にも妥当します。
経営視点とは
理念経営に基づいて「企業・組織合理的に考え行動する視点」すなわち『経営視点』は、以下のように定義できます。
- 経営視点(ビズガイバーの定義)
自社の経営上の理念等に照らして、自社に相応しい考え方および行動でそのあり方や利益を追求する視点
経営視点を持つ社員は、業務のあり方や職務上の行動等を判断する際に自社の理念等に絶えず立ち返り、『当社の理念等に照らしてどう考え行動するのが当社に相応しい(当社として正しい)か』と考えて行動することができるようになります。
経営視点を持つ組織
さらに、組織として経営視点を持つに至れば、組織形態を管理型から自律型へシフトさせることが可能になります。
- 自律型組織
経営者や上司からのトップダウンの命令や指示を待つのでなく、現場のチームや社員がそれぞれに移譲された意思決定権で自ら判断して迅速に行動するという組織形態
従来的な管理型組織では、職位は上司・部下という指揮命令の階層で、上司の指示・承認に基づいて行動がなされます。上司(さらにその上司)の指示・承認を得る必要があるため、時代や市場の変化に迅速に対応しづらいデメリットがあります。
それに対して自律型組織では、職位は階層ではなくフラットな役割分担で、それぞれの役割的権限に基づいて行動がなされます。自らの役割的権限で意思決定できるため、時代や市場の変化に迅速に対応しやすいメリットがあります。
つまり、経営視点を持つ組織は、チームや社員の役割的権限を機能させることによって、時代や市場の変化への迅速な対応力を獲得できるようになります。
注1)企業の理念等の捉え方には通説的な定義や区分はなく、企業それぞれです。概括的理解としては大きく3つの系譜に区分できます。① 企業活動の視点から「企業理念〜経営理念〜行動基準」と捉える系譜、② 企業価値の視点から「ビジョン〜ミッション〜バリュー」と捉える系譜、③ 社会貢献の視点から「パーパス」と捉える系譜。ただし、ある企業の理念等がたとえば企業活動の視点(①)で表現されていたとしても、その企業は企業価値や社会貢献の程度が低いということにはなりません。3つの系譜を兼ね備えた理念等の捉え方がなされていることが多いです。
戦略的視点
社員も仕事では「経営者のように(企業・組織合理的に)考え行動する視点」すなわち「経営者視点」を共通に持つべきとされる。
しかし、経営経験がないのに経営者のように考え行動しろというのは、経営者と社員との情報の非対称性などを考えるとまず無理な話である。
経営陣のみならず社員のすべてが自社の理念等をその考え方や意思決定に反映させて行動するいわゆる「理念経営」(ビジョナリー経営)は、近年とくに重視されている企業・組織の経営のあり方である。
すなわち、社員も共通に持つべき「企業・組織合理的に考え行動する視点」とは理念経営に基づくその視点とするのが妥当で、「経営者視点」とは似て非なるものである。
理念経営に基づいて「企業・組織合理的に考え行動する視点」すなわち『経営視点』は、社員それぞれが業務のあり方や職務上の行動等を判断する際に、自社の理念等に絶えず立ち返り、『当社の理念等に照らしてどう考え行動するのが当社に相応しい(当社として正しい)か』と捉える視点と定義できる。
さらに、組織として経営視点を持つに至れば、現場のチームや社員がそれぞれの役割的権限で迅速に意思決定して行動する「自律型組織」へと組織形態をシフトさせることが可能となる。
それはすなわち、時代や市場の変化への迅速な対応力を獲得することにつながる。